0902 共働きの増加

 1979年「厚生白書」[*9-4]によれば、共働きについての1973年の調査で、「夫の希望としては『子供ができるまで働いてほしい』が46.0%となっているが、妻の希望としては、『事情が許す限り働きたい』が43.6%、『子供ができるまでは働きたい』が41.6%を占め、夫の『できるだけ長く働いてほしい』の22.2%とあいまって、共働きに対する志向はかなり強い」という結果が得られました。

 「労働力調査」によると、共働き世帯数は1980年に614万世帯でしたが、1992年に914万世帯に増えて、専業主婦世帯を上回りました。地方部にくらべて女性の有業者率の低かった都市部でも、1990年ごろには全国平均と同等の50%程度になってきました。子供に手がかからなくなってくると、物価上昇や景気低迷、商品購入意欲の高まりなどを背景に、パートなどの共働きが増えてきたと推測できます。

 
 図 専業主婦世帯と共働き世帯

 国勢調査報告の「有配偶女性」(主婦)は、夫が必ず就業しているとは限りませんが、その就業率によって、共働きの状況を推測することはできます。年齢層別の女性人口を母数とした有配偶女性の就業率は、2000年ごろまでの全国では、40歳代以上で60%以上と高く、30歳代までは50%を下回っていました。ところが2015年になると、20歳代から30歳代までの就業率が上昇してきました。また、40歳代以上の就業内容は、家事が主で仕事は従の主婦が多かったのですが、2015年では30歳代までを中心として、仕事を主とする主婦が増えてきました。加えて、未婚就業者の比率も、30歳代以上で徐々に高くなってきました。

 
 図 有配偶女性の年齢別就業率

 東京都の有配偶女性の就業率、とりわけ仕事を主とする有配偶女性就業率は全国平均にくらべて低率でした。しかし2015年の国勢調査報告では、全国平均には届かないものの、30歳代から40歳代で、仕事を主とする就業率が上昇しました。また30歳以上の未婚者の就業率は1995年には東京都の比率が全国平均を上回っていましたが、2005年以降は両者が接近しました。

 女性の有配偶就業率は40歳代以上ではもともと高かったのですが、それより若い年齢層でも時代を追って上昇しました。その内容は仕事を従とする就業から、主とする就業形態が少しずつ増えてきました。そのような変化は地方部が先行して進み、東京都などの大都市は遅れていたとみられます。女性の就業、社会進出は戦後一貫して進んでいましたが、1980年ごろから社会的認知が確かになっていったと考えられます。女性の就業は、かつては生活を支え、豊かにすることに目的がありました。しかし同時に、自己実現や自己表現の色彩も表れてきたとみられます。

 女性の社会進出を背景に、1986年に男女雇用機会均等法、1997年にその改正法、1999年に女性の深夜労働を認めるなどの労働基準法改正、さらに同年には男女共同参画社会基本法などの制度が整備されていきました。

 共働きによって家計はどうなるか。「家計調査」は調査数が1万世帯程度で、偏りがあるとみられますが、家計構造をみる上で貴重です。収入分布を低い方から高い方に世帯数が同じになるように5分割した収入5分位階級で世帯主収入と世帯主以外(大半が配偶者)の収入をみると、いずれの時期であっても、世帯主のみの収入格差は第4分位と第5分位の間がやや広いものの極端ではありません。しかし世帯主以外の収入は、第4分位、第5分位になるほど多くなっています。平均値の金額自体は世帯主の2割に満たないものの、第5分位が第4分位のほぼ2倍に開いており、第3分位と第4分位との間も第3分位以下の差よりも大きくなっています。収入がもっとも多い第5分位は、世帯主自身の収入が高い上に配偶者などの収入が高いことがうかがえます。また「家計調査」の金額は平均値ですので、第5分位の世帯であっても収入のない配偶者もいることを考慮すると、個別にはより高収入の配偶者もいるはずです。共働きであるか否かが収入にかなりの影響を与えていることがうかがえ、共働き世帯が共働きをやめれば、生活が大きく変化せざるを得ないと推測されます。

   
 図 収入5分位別世帯主収入   図 収入5分位別世帯主以外の収入


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