140703 コミュニティ志向・シェア志向 -近年の動き

 変化の三つ目は、シェア志向やコミュニティ志向です。三浦展氏は、『第四の消費』[*14-7]のなかで、日本の消費社会を、戦前と戦後の高度経済成長期、その後の2004年までと2005年以降の4期に分け、おおむね2005年以降を「第四の消費社会」としています。各期の国民意識は、第1期は「国家重視」、第2期は「家族や家族と一体の会社重視」、第3期は「個人重視」、第4期は、人口減少と経済力の低下を背景として「社会重視」となると指摘しています。第3期から第4期の変化は、個人志向から社会志向、及び利己主義から他己主義、私有主義からシェア主義など、5項目があるとされています。

 居住者が数人で借家を借りるルームシェアは古くからありますが、事業者が居住者を募集するシェアハウスが2000年代半ばから東京を中心に運営されるようになりました。低家賃であることも魅力ですが、入居者同士の交流やコミュニティにも魅力があるとされます。乗り物についても、観光地以外の都市でもレンタサイクルや、乗用車のカーシェアリングのサービスが提供されるようになりました。

 住宅は、余剰室のある世帯もあり、一定期間や時間帯によっては空室になる場合もあります。乗用車も、24時間365日間を通して使う世帯は、都市部では少数派です。独占的に使いたいという欲求がなければ、共同で使用することによって負担を少なくできます。持家や自家用車などは、満足感を得たり自分の経済力を示すステータスだったともいえます。しかしステータスをさほど重視せず、実質本位に、消費から得る価値自体を重視する意識が芽生えたと考えられます。

 また、シェアをすることによって、他者と交流する機会や必要が増えます。都市生活は、匿名性や相互不干渉が特徴とされ、それが魅力とされることもありました。都市は、人びとが多数集まっているにもかかわらずコミュニティが希薄化し、意思疎通が難しくなって、時として誤解や対立が生まれるようになってきました。いくつもの災害の体験から、「絆」の大切さが説かれるようになってきました。今後、コミュニティの役割を見直す人が増えているのかもしれません。


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