140704 反グローバリゼーション -近年の動き

 変化の四つ目は、生活のいくつもの局面に大きな影響を与えている世界的枠組みの変化です。グローバリゼーションはアメリカが主導して1990年代以降、世界中に広がりました。そのアメリカで、自国第一主義を唱え、グローバリゼーションの主要な要素である自由貿易を否定する人物が、2017年に大統領となりました。他にも、イギリスでは2016年の国民投票の結果、欧州連合(EU)離脱が選択されました。欧州各国では、難民問題をきっかけとしてEU離脱を唱える勢力が勢いを増しています。グローバリゼーションと逆行する動きが世界各地に生まれています。

 通信手段や交通・輸送手段が高度に発達した今日、国際的なつながりや関係が強まることは必然です。しかし、異なる風土条件や資源、慣習、文化、歴史、経済状態にある多くの国が完全に一体化することは不可能であるとともに弊害も予想されます。そもそも貿易や経済、利益は、資源や富の偏在と格差によって成立しています。格差や偏在が大きいほど利益が生み出されるのは明らかですし、グローバリゼーションは、そのために利用されているという側面もあります。グローバル化によって各地域や国の資源を有効活用することと、富や豊かさを適切に配分することとは必ずしも結びついておらず、世界規模の格差拡大をもたらす場面もあります。それぞれの国や地域の安定や発展のために、分野によって、ある程度の障壁は不可避です。

 グローバリズムに対しては、ジョセフ・E・スティグリッツをはじめ多くの経済学者が、とりわけ金融資本のグローバリゼーションに対して批判を行っています。グローバリゼーションは、あたかも普遍的原理であるかのように主張されますが、現実には各国の都合に合わせて使い分けられることもあります。そのことが多くの混乱と対立を生み出しています。

 グローバリゼーションはわたしたちの生活や家計にも、直接・間接の影響を与えました。そのさまざまの弊害への批判・反感が噴出し、各国で反動が生じているといえます。その成り行きは、わたしたちの生活に大きな影響を与えると思われます。


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