0505 インスタント食品の登場

 高度経済成長期には食料品の発明もありました。日清食品を創業した安藤百福が1958年に発明したチキンラーメンは、お湯をかけるだけで食べられるという簡便さから人びとに受け入れられました。これ以降、多種多様な即席麺が発売され、さらに1971年には日清食品からカップヌードルが発売されました。即席麺、カップ麺は一気に普及しました。

 即席麺のうち袋麺は、発売後消費量が急伸して、1969年から1972年にかけては、一人当たり年間34食が消費されました。1973年以降は、カップヌードルなどのカップ麺に取って代わられる形で袋麺の消費が減少していますが、袋麺とカップ麺を合わせると、1990年代には一人当たり40食を超え、その後も少しずつ増えています。

 
 図 インスタント麺・冷凍食品1人当たり年間消費量

 冷凍食品は1964年の東京オリンピックで、選手村の食堂で使用する大量の生鮮食料品を準備する必要から開発が進んだとされます。最初は業務用が主でしたが、冷凍冷蔵庫と電子レンジの普及にともなって家庭用の冷凍食品が販売されるようになりました。冷凍食品の消費量は発売後2000年ごろまで急速に増加しました。1970年の消費量は一人当たり年間1.4kgに過ぎませんでしたが、1990年に10.8kg、2000年に18.7kgとなり、その後も20kg程度となっています。

 レトルト食品は、1969年に大塚食品からボンカレーが発売され、その後各社から多くの種類のレトルト食品が発売されるようになりました。これらの食品は、1980年代、1990年代に食生活のなかに定着していったと推定されます。

 1968年に、冷蔵庫との関係について吉沢久子氏は次のように記しています[*5-25]。「平均4人家族に100リットルの冷蔵庫では、住宅街には必ず商店街が近くにできる日本のくらしだと、買い物にいく回数と冷蔵庫の20リットルや40リットルの内容量の差はあまり関係ないのが今の状態である。」「冷凍食品の普及を見越して、各メーカーは早々と製氷室を広くとったものを売り出したが、消費者はおいそれとついていかず、消費者の冷凍食品の関心は、・・・買いかえの必要が感じられる頃になって、ようやく動きはじめてきたわけである。・・・冷凍食品が平均してそれほど割安ではなかったことも原因している。」吉沢氏は続けて、松下電器(現・パナソニック)が消費者モニターを募集し、1週間にわたって冷凍庫に入れた冷凍食品だけで生活する現場を取材し、冷凍庫の便利さが受け入れられているようであると報告しています。


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