0904 少子高齢化

 少子高齢化のうち、高齢化については戦後間もなくから問題視されていました。人口高齢化への懸念については、1956年度版「厚生白書」[*9-5]で、「人口の動きの型が、少産少死型に急激に転換したことの結果として、人口の急速な老令(ママ)化、すなわち総人口における老令人口の占める比率の急速な増大という現象が生まれつつある」とすでに予想されていました。1974年度版「厚生白書」[*9-6]では、「我が国の老年人口は、戦後の死亡率の改善により、その総人口に占める割合も増加を示し、また、老年人口の年齢構成も高齢化に向かう傾向にある。このような動きは、我が国の人口構成の老齢化をもたらすとともに、今後、生産年齢人口の老年人口に対する扶養負担の増大等社会における老人問題が増大するものと予想される」との認識を示しました。

 平均寿命は0歳時の平均余命です。1960年ごろまでは乳児死亡率が高かったために、0歳時の平均余命は、近年にくらべてかなり短いものでした。また平均余命は、ある年齢時の生存者について余命を推定するので、乳児死亡率などを反映し、上の年齢時の方が、余命と年齢との合計年数が長くなります。20歳と40歳時の男女の平均余命をみると、近年の合計年数は平均寿命とほぼ同じですが、1950年前後には10歳以上、1980年ごろまでは数歳から5歳前後長命になっています。

 
 図 0歳・20歳・40歳時の平均余命(0歳時は平均寿命)

 1960年ごろまでは、平均寿命は60歳台でした。定年の年齢や年金支給年齢は平均寿命や余命を参考に決められました。平均寿命や平均余命が長くなるにつれて定年年齢や年金支給年齢も上がっていきました。

 1980年の65歳以上高齢者率は9.1%、1990年12%でした。2000年には17.3%となり、高齢化が加速していきました。人口の高齢化と三世代家族の縮小によって、高齢者のみ世帯が増加してきました。高齢夫婦世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)の比率は、1980年には2.8%でしたが1990年には4.8%、2000年7.8%、2015年11.4%となりました。さらに65歳以上の単独世帯率は1980年2.4%、1990年4%、2000年6.4%、2015年11.1%と、一貫して上昇し続けました。

 
 図 高齢化の推移

 単独世帯は、かつては若年層がほとんどでした。1980年には単独世帯のうち34歳以下が51.1%、65歳以上が15.5%でした。しかし2005年には35.6%と26.7%になり、2015年には15.6%と32.2%になりました

 単独世帯で若年層の数が減少したのは、若年人口自体が減少していることと、親からの独立が遅くなる傾向があることにも原因があると想像されます。一方でより高い年齢層が増えていることについては、男性の場合は35歳以上のすべての年齢層で単独世帯が増加していることが原因であり、女性の場合も25歳以上のすべての年齢層で増加傾向にあることに加えて、75歳以上のいっそう高い年齢で、配偶者との離死別などもあって増加していることに原因があります。

 少子化が、現象としては高齢化とともに進行していたにもかかわらず、高齢化と関連付けられるようになったのは、1990年代からであるとみられます。少子化の主因は未婚化、晩婚化の進行です。阿藤誠氏は、「1970年代の初頭以降わが国の結婚をめぐる状況の変化が顕著である。とりわけ若者の未婚率が著しく上昇するとともに、初婚年齢、再婚年齢ともに今日までほぼ毎年上昇を続けている」[*9-7]と指摘しています。実際、夫婦当たりの完結出生児数をみるならば、1970年代から2000年ごろまでは平均2.2人を維持していました。

 
 図 完結出生児数(結婚後15~19年の夫婦の子供数)

 出生数を抑制する産児制限は戦後の一時期は推奨されさえしました。1組の夫婦の子供の数は当時、社会的問題とはみなされず、個人の問題と捉えられていたと思われます。1980年ごろにも、少子化よりも高齢化の方が関心を集めました。しかし高齢化の深刻化とともに、労働力人口や消費人口の減少が社会や経済に及ぼす影響が明らかになり、少子化が問題視されていきました。

 婚姻率は、1970年代前半までは人口千人当たり10件程度でした。団塊の世代が20歳代後半となる1970年代半ばから徐々に低くなりました。団塊ジュニア世代が20歳代になる1990年ごろには6件強にやや持ち直しましたがその後は5件程度に下がりました。婚姻率は結婚適齢期とされる20歳代から30歳代前半人口との関係が深く、若年人口の減少が婚姻率低下に影響していることは明らかですが、加えて若者の婚姻率自体が低下しました。

 20歳代後半の未婚率は、1970年までは女性で20%、男性で45%程度でしたが、1980年ごろから急速に上昇し、30歳代でも1980年ごろから未婚率が上昇しました。平均初婚年齢は、1970年代までは男性が28歳未満、女性が25歳未満でしたが、1990年になると、男性30.4歳、女性26.9歳となり、2000年には男性30.8歳、女性28.6歳となりました。

   
 図 年齢別未婚率(男性)  図 年齢別未婚率(女性)

 生涯未婚率(45歳から54歳までの平均未婚率)は、1970年(この年の50歳は戦争を経験した1920年生まれ)には、男性は全国で1.7%、東京都では2.8%とやや高い程度でした。女性は全国で3.3%、東京都で5.8%でした。しかし1980年から2000年にかけて上昇し、2000年(50歳は1950年生まれ)には、全国で男性12.6%、女性5.8%に上昇し、東京都では男性は19.3%、女性は10.0%となりました。


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