0803 コンビニエンスストアと長時間営業

 今日のような、コンビニエンスストアのチェーン展開が始まったのは1970年代です。1973年にファミリーマート、1974年にセブンイレブン、1975年にローソンがそれぞれ1号店を開店しました。

 1977年1月18日の朝日新聞[*8-7]は、「コンビニ店が新しい小売業の生存権(?)をおびやかすものとして騒がれるようになったのは2年ほど前、イトーヨーカ堂、ダイエーなどの大手スーパーがこの分野に進出し始めてから」であると指摘し、コンビニエンスストアは3千店で、そのうち「米国型の本格的チェーンが250店、やや日本的な経営を加味したもの1,200店、ミニスーパーに近い独立店1,500店といったところが実態」、「年中無休、早朝-深夜のモーレツ経営、優れた店のレイアウトや品揃え・・・と、大手のチェーン店には強力な武器があり・・・廃業に追い込まれる零細店が急にふえている」と報じています。

 1987年にはコンビニエンスストア14,247店舗のうち22.5%が24時間営業をし、16時間営業を加えると55%が長時間営業をしていました。営業時間の延長によって売上げが上がるとして、百貨店やスーパーのなかにも営業時間を延長する店舗があらわれました[*8-8]。コンビニエンスストアは、1992年に2万店を、2002年には4万店を超えました。コンビニエンスストアの多くはフランチャイズ方式による店舗であり、オーナーは、脱サラや自営業や小売店からの転職も多いとされます。

 
 図 コンビニエンスストア店舗数

 1985年ごろには、「百貨店やスーパーなど大規模小売店の売り上げが伸び悩んでいるのを反映して、年初の開店日を早める動きが目立っている。かつては正月三が日は休むのが常だった百貨店は二日、三日に開店日を繰り上げるところが多くなり、スーパーも年中無休のコンビニエンスストアに刺激されて、二日開店が広がってきた」[*8-9]。その後正月営業は元日にまで及ぶことになります。

 それまでは、三が日にはほとんどの人が休み、初詣や親戚、知人への挨拶、映画、ボーリングなどの娯楽をしたり、自宅で過ごしたりしました。地方出身者の多くは帰省して、地元で年末年始を過ごしていました。三が日に仕事をするのは一部の娯楽施設や飲食店などに限られていました。ところが三が日営業が小売店にまで広がっていきました。小売店の営業は、店員はもちろん、流通業者や生産者への影響もあります。それにもかかわらず正月休みを返上することが次第に広がり、受け入れられていきました。

 年中無休や24時間営業といった変化は生活を便利にしましたが、同時に季節感を薄め、生活のリズムを平準化することにもつながったといえます。またコンビニエンスストアは住宅地や人通りの多い場所に立地し、立地場所に合わせた多様な商品を品揃えして長時間営業したために、生活時間が不規則な消費者にとって便利な地域施設になりました。さらに、調理に手間のかからない惣菜や弁当などの食品を充実させました。コンビニエンスストアは、とりわけ単独世帯が生活するために便利な施設となりました。


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