第2部 高度経済成長期

04.就業と住宅

0401 就業の地域的傾向

 全国の第2次産業就業者の比率は、1975年まで急増して34.1%に、第3次産業は44.9%となりました。第2次産業の比率はその後1995年まではほとんど変わりませんでしたが、1995年以降は小さくなり、2015年には23.6%となっています。第3次産業は2015年に67%前後で1955年時点の2倍近くの比率となりました。圏域別には九州地方や北海道・東北地方などではもともとは第1次産業比率が大きかったのですが、第2次産業比率があまり大きくならないままに第3次産業比率が上昇しました。大阪府や東京都では1955年時点で第2次産業と第3次産業就業者の比率が高く、その後、第3次産業に移行していきました。愛知県では、第2次産業比率が高いままで、第3次産業の比率は、2000年以降も60%程度と低いままです。

 
 図 圏域別、第2次・第3次産業就業者比率の推移

なお言うまでもなく、産業別県内総生産の比率も就業者比率の推移と対応しています。

 
  図 圏域別、第2次・第3次産業GDP比率の推移

 東京都は1955年に第2次産業就業者が37.5%でしたが、1970年以降は縮小し2015年には15.3%となりました。第3次産業は58.6%から72.1%に伸びています。都市部の他の府県も東京に似ていますが、他府県では第2次産業が1970年代までは伸びたという違いがあります。東京都の産業は、第2次産業からいち早く脱却し、第3次産業に移行したとみられます。1980年ごろから、金融や企業の中枢・管理機能が東京都に偏在するようになりました。

 1950年の就業率は全国で男性81.7%、女性47.9%でした。男性では東京都77.5%、京都府77.9%、大阪府79.3%で、全国平均よりわずかに低く、女性は東京都29%、大阪府28.9%、神奈川県でも30.8%と全国平均にくらべて著しく低くなっています。戦前から終戦直後まで、東京都や大阪府で専業主婦が多かった可能性についてはすでに指摘しました。

 
 図 都道府県別就業率(男性)
 
  図 都道府県別就業率(女性)

 その後の就業率は、男性の場合はほとんどの都道府県で、一貫して低下し、2015年には全国で62.6%にまで低下しました。都道府県単位でみると、1980年までは都道府県間の差が小さかったのですが、その後は格差が目立ち始め、2015年には10%程度の差が出てきました。なお、2000年ごろから、東京都などで、他県にくらべて男性の就業率が低くなる傾向が顕著になってきました。これは若い年齢層から進行してきたとみられます。25~29歳男性の東京都の就業率は、1995年には87.5%で、全国平均の91.3%を少し下回る程度でした。ところが2005年には、全国の就業率も80.9%と下がりましたが、東京都は67.7%となって全国を大きく下回ってきました。

 男性に対して女性の場合は、1950年時点で60%前後やそれ以上の高率だった地方部では下がり続け、逆に低率だった東京都・神奈川県・大阪府や、やや低めの40%程度だった奈良県、兵庫県、京都府ではその後は高まる傾向があります。とりわけ東京都では、1950年には都道府県中最低の大阪府よりも0.1%高いだけの29%でしたが、1995年には全国平均をやや上回る48.1%に上昇しています。1950年から2015年の間に女性の就業率の地域間平準化が進み、2015年には全国平均45.4%で、都道府県間の差は小さくなりました。

 ただ、都市部女性の就業率は上昇したものの、1980年以降、東京都を含め都市部の共働き率はさほど高くなりませんでした。夫婦のいる一般世帯中、夫婦が就業している世帯率は、1980年の全国平均が45.8%でしたが、東京都は38.4%、神奈川県33.9%、大阪府35.3%などでした。その後も東京大都市圏と大阪大都市圏の夫婦就業世帯率は低いままです[*4-1]。

 
 図 都道府県別、夫婦のいる一般世帯のうち、夫と妻がともに就業している一般世帯率

 高度経済成長期以降の就業者の増加内訳は、男性の場合は製造業の増加が著しく、1950年に405万人でしたが1970年に879万人となり、1990年まで横ばいで、その後減少しました。また卸売り・小売業も1950年242万人でしたが、1980年に695万人にまで増加し、1990年代以降減少しました。サービス業と建設業就業者もそれらに次いで増加しました。建設業就業者数は1980年ごろになると停滞しその後減少しました。他方、サービス業就業者数は増加し続け、1995年に製造業従業者数に並び、その後は製造業就業者が減少したために最多になりましたが、就業者中の比率は20%台で推移しています。

 
 図 産業別就業者数(男性)
 
 図 産業別就業者数(女性)

 建設業は、かつては地方部の男性の重要な就業先でした。1970年までは300万人程度で各都道府県別にはばらつきがあるものの就業者の10%程度でしたが、1995~2000年に全国で550万人程度に達し、2000年には15%ほどになりました。地域としては東北地方、北陸地方、中国地方、四国地方、九州地方で20%に近い比率で、関東地方、近畿地方、東海地方では10%台前半でした。しかしその後はいずれの地域でも急速に減少しました。

 女性の場合は、製造業、卸売り・小売業に加えてサービス業で増加が進みました。この3つの業種の増加数は似ており、いずれも1950年に150万人で、1970年には製造業と卸売り・小売業は500万人ぐらいまで、サービス業は400万人に増加しています。その後は、製造業は横ばいとなって1990年以降減少しました。卸売り・小売業は1990年をピークに減少、サービス業は1990年以降に急伸し、製造業はもちろん卸売り小売業を大きく上回って、2000年には就業者の4割を超えた。なかでも医療・福祉業が2015年には2割を占めました。

 なお、1995年に国勢調査の産業分類が変更されました。また「分類不能の産業」の就業者が都市部を中心に増加しています。「分類不能の産業」は2000年より前には1%にも満たず、無視できる程度の数字でしたが、2015年に全国で5%程度となり、東京都では1割を超えています。実態は不明ですが、近年ブログによる広告やユーチューバー、ゲーマーとして収入を得る若者が話題となるなど、従来の産業分類の枠外の職業が生まれています。産業や職業、仕事に対する既存の概念に変更を迫る現象であるのかもしれません。


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