0503 生活関連領域での機械化

 コンピュータは第2次大戦中に欧米で開発が進められ、日本でも1950年代から研究開発が行われて、1960年ごろには実務に利用されるようになってきていました[*5-14]。高度経済成長期の技術革新は生活に関わるいくつかの場面でも大きな変化を生じました。以下はその例です。

 コンピュータを用いた業務の一つに国鉄(日本国有鉄道、現・JR)の乗車券発券システムがあります。かつて座席指定券の発行のためには、当該列車の管轄部署に駅の窓口から電話で予約し、窓口で列車名や日時、座席番号を用紙に記入して乗客に渡していました。ところが1964年に指定席予約と自動発券のできるオンラインの「マルスシステム」が誕生し、順次業務内容を広げていきました[*5-15]。

 乗車券は、かつては発駅と定額、あるいは発駅と着駅が予め印刷された乗車券に日付をスタンプするか、利用者が少ない区間は手書きの乗車券でした。簡易な券売機はあったもののほとんどは窓口で販売されていました。改札についても、駅員が目視で確認し、改札ばさみで切り込みを入れるなどしていました。しかし1967年に京阪神急行電鉄(現・阪急電鉄)北千里駅に定期券専用の自動改札機が導入されました。定期券以外の乗車券の自動改札は、乗車券の電磁化と自動券売機の普及によって進みました。乗車券はその後、磁気券、プリペイドカード、ICカードなどが利用されるようになりました。

 郵便物の仕分け作業もコンピュータを利用するようになりました。1968年に郵便番号が導入され、自動読み取り区分機による仕分け自動化が、東京中央郵便局を皮切りに順次運用されるようになりました。

 銀行では、現金自動支払機(Cash Dispenser)が、1969年に住友銀行(現・三井住友銀行)の梅田北口支店と新宿支店にはじめて設置されました。このときの機器はオフラインでしたが、オンライン化が進み、1984年には都市銀行のCDオンライン網が完成しました。また現金自動預け払い機(Automatic Teller Machine)は1977年から順次設置されました。CDの設置件数は1990年ごろまでは2万台程度にふえましたが、それ以降は減少しました[*5-16]。ATMは2000年ごろには10万台を超えました。しかしその後は減少しています。

 
 図 CD・ATMの設置台数と支払い件数

 新しい技術が導入される以前の駅や郵便局、銀行では、客の一人一人や郵便物の一つ一つに駅員・局員、行員が対応しなければなりませんでした。その部分の業務は機器に取って代わられました。同様のことは製造業でも起きてきました。1970年代から少しずつですがロボットが導入されるようになりました[*5-17]。

 さらに、1960年代以降各所に自動販売機が設置されるようになってきました。自動販売機の設置台数は、1970年には100万台程度でしたが1980年代には500万台を突破しました[*5-18]。


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