1203 非正規雇用と外国人労働者の増加

 パートやアルバイトは、人手不足になっても低賃金の雇用形態として定着していきました。2003年「労働経済の分析」の、「パートタイム労働者総合実態調査」に基づく記述[*12-8]によれば、「労働者計に占める『パート』(1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者)の割合は、1990年の11.1%から2001年の22.1%へと約2倍」で、「男性では1990年の3.5%から2001年には9.0%、女性では1990年の24.1% から2001年には45.7%に上昇」しました。

 「男性の『パート』については、在学中の学生や高卒のフリーター層、退職後短時間での勤務をしている高年齢層男性等が中心」であると考えられますが、「2001年において男性の『パート』のうち57.4%が 主に自分の収入で暮らして」おり、「『生活を維持するために働いている』という者の割合は1990年の46.9%から2001年には62.6%に上昇」しました。

 「女性の『パート』については、家庭との両立等のために都合の良い日時に働くことができる、勤務時間や日数が短いといった理由から短時間労働を選択している人が多い。」「女性の『パート』の働いている理由は、『家計の足しにするため』が1995年、2001年ともに約6割と依然として高いものの、『生活を維持するため』の割合が1995年の約3割から2001年において約4割に上昇しており、賃金カットにより夫の賃金が減少したり、リストラにより夫が職を失ったりした主婦層等が短時間労働者として労働市場に参入している可能性もある」と分析しています。

 さらに同分析は、パートであるにもかかわらず、正社員に準ずる労働時間や勤務体系、責務を担っている割合が増え、部課長や係長グループリーダーなどの役職に就いている割合も増えていると指摘しています。

 アルバイト・パートはかつての補助的・補完的役割ではなく、労働実態としては正規雇用と同等の確固とした役割を与えられるようになりました。しかし処遇については、正規雇用の手続きで採用されていないこと、あくまでも臨時的・期限付きとの位置づけのために、正社員とは明確に区別されました。

 さらに、低賃金の人手不足解消のために、外国人労働者が増えていきました。1993年の「第1回外国人雇用状況報告の結果について」は、「現在、我が国で就労する外国人労働者は、合法、不法を含めると既に60万人以上、雇用される労働者全体の1%以上に達していると推計され、我が国労働市場に及ぼす影響は看過できないものとなっている」と指摘しています。日本人の雇用形態が多様化し、非正規雇用が増加しただけでなく、外国人雇用があらわれたことによって、労働環境はますます変化していきました。

 
 図 産業別外国人労働者数

 同調査の1993年の外国人労働者数は9.7万人ですが、記述中には推計で60万人とされ、外国人労働者の全体像は必ずしも明らかでない、とあります。同調査の外国人労働者数は、調査開始以降、増加の一途をたどっており、2010年に60万人を超え、2018年には140万人を超えました。

 調査方法が途中で変更されていますが、業種は、2006年までは製造業が大半で、2008年以降、教育・学習支援(学校講師などを含む)や卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、その他サービス業などが増えてきています。それら以外に金融・保険業、情報通信業が一定数を維持していますが、これらは専門性の高い業種であり、人数の増加は緩やかです。増加が著しい業種は比較的単純な労働であると推定され、従事者には留学生なども多いとみられます。

 正規雇用が減少して、1990年代から非正規雇用のアルバイト、パート労働者が増加しましたが、その増加傾向と外国人労働者の増加傾向は対応しています。日本人のパート、アルバイト不足を補うものとして外国人労働者が位置づけられているとみることができます。


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