0302 若年層の人口動向

 1980年代までの東京都の若年人口の特徴は、いずれの世代も20~24歳にピークとなったあと、20歳代後半から減少に転じたことです。1935~1939年生まれは、20~24歳時の1960年の131万人から、40歳代前半になった1980年に85万人になり、1940~1944年生まれは、1965年158万人から1985年に92万人に、団塊世代を含む1945~1949年生まれは1970年168万人から1990年に100万人となりました。当然ながら、それらの子供世代とみられる世代の人口も、いったんは減少し、成長し10歳代後半になると増加に転じることとなりました。

 
 図 年齢層別の人口推移(コーホート)-東京都

 東京から減少した人口も、男性の方が女性を上回りました。1945~1949年生まれを例に取ると、20~24歳時の人口は男性92.3万人、女性75.3万人でしたが、10年後には男性59万人、女性54万人、20年後には男性51万人、女性49万人に減少しました。10~14歳時の性比は104.8でした。その後20~24歳時に122.6となりましたが、30~34歳で108.5、40~44歳になると103.8となりました。

 
 図 25~34歳人口の都道府県別性比

 東京都で20歳代後半以降に人口が減少した代わりに、千葉県・埼玉県では増加しました。東京都での減少人口の多くが埼玉県や千葉県、神奈川県の南関東に移動したとみられます。千葉県・埼玉県の人口は、東京に近い鉄道沿線の都市で1950年代から徐々に増加しました。1965年から1970年に増加した人口は、千葉市で14万人(増加率42%)、千葉県船橋市で10万人(45%)、埼玉県越谷市で6万人(82%)などであり、大半は30~40歳前後だったとみられます。

 
 図 年齢層別の人口推移(コーホート)-埼玉県

 1都3県を合計すると、これら世代の人口は20歳代まで増加して、それ以降はほぼ横ばいという状況です。首都圏への転入者の多くが、東京都を経由して周辺の県に流れ込むという経過が推定されます。神奈川県では東京都と同様にこれらの世代が20歳代前半に増加しましたが、東京都とは違い、それ以降は減少せず横ばいでした。

 なお、1934年以前生まれの世代については、20歳代前半の人口が東京都で増加したのはその後の世代と同じですが、20歳代後半以降に目立って減少しているようすはありません。この世代のほとんどは都内に定着していった可能性が高いと推定できます。

 さらに、1950年以降生まれの世代は、東京都や首都圏では、1940年代ごろ生まれと同様の人口推移が認められますが、出生数自体が全国的に縮小したことと、東京都や首都圏で生まれた人口が増えてきたこともあり、上の世代ほどの大きな変動はなくなっていきました。

 近畿地方では、大阪府が東京都に似た推移を、兵庫県が神奈川県に似た推移をたどっています。奈良県と滋賀県は首都圏の埼玉県・千葉県などと類似しています。また愛知県も神奈川県に近い状況です。

 大都市圏以外の地方部での人口は、1930年ごろ以降生まれの世代が10歳代後半から20歳代までは減少し、その年齢を超えると変動が少なくなっています。東北地方6県の1945~1949年生まれを例にとると、1960年で10~14歳時の人口は120万人でしたが、1970年に74万人に減って、その後やや回復しました。同世代は、北陸地方4県では67万人が45万人に、中国地方5県では85万人が58万人に、四国地方では55万人が32万人に、九州地方・沖縄では177万人が106万人となりました。1970年ごろの地方部では、若年層の4割前後が都市部に転出したと推定されます。なお、これらの地方のなかで、広島県や福岡県などの中核都市を含む県の動向は他県と異質です。

 
 図 年齢層別の人口推移(コーホート)-東北地方6県

 戦後、1970年代前半までの期間は3大都市圏への著しい人口集中という希有の時代だったといえます。1970年代後半には安定化し、東京圏のみが転入超過となりました。


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